高校野球の個人研究

令和の甲子園勝率(佐賀勢の勝利を待ち望んでいる)

私は佐賀生まれで高校卒業までを佐賀で育ち、その後社会人になって15年ほど佐賀で過ごしました。※2023年現在は長崎に住んでいる。愛着のある佐賀県、その佐賀の高校野球を30年以上見てきて、1994年夏には佐賀商の全国制覇、2007年夏には佐賀北の全国制覇。優勝候補にすら上がった事もないのに2度も地元校優勝の感動を体験しました。

時は流れ2023年。
佐賀県勢は甲子園の初戦でなんと10連敗中。2013年夏の有田工以来、9年間も春夏の甲子園で勝利がありません。もちろん全国最長です。
※北海道を北と南に分け、2020年の交流試合(帯広農が勝利)を除外すれば、「北北海道」が2013年春の遠軽以降勝利なし。

今年で令和も5年。
そこで令和になっての甲子園での勝率を都道府県別に見てみました。
(※2019年夏の第101回選手権以降の成績が対象)

2020年の交流試合を対象とするかしないかで若干順位が変動しますが、一応甲子園での成績として今回は交流試合も含めた勝率にしています。
勝率が同じ場合は、勝利数が多い方を上位とし、勝率.000は敗戦数が少ない方を上位としています。
また不戦勝/不戦敗も1勝/1敗として計算し、当該府県と勝率が同じ場合、不戦勝のある方を下位とし、不戦敗のある方を上位としています。

令和・甲子園勝率 上位

1位は22勝6敗の.786で予想通り大阪。過去10年、20年と切り取っても大阪1位は揺るがないように思えます。令和になってから2019年夏履正社、2022年春大阪桐蔭と2度の優勝があり、交流試合も大阪桐蔭、履正社いずれも勝利を積み上げています。

2位は12勝5敗で滋賀。近江が2021年夏、2022年春夏と3季連続で1大会4勝の活躍。特に2022年春は京都国際の出場辞退による補欠出場で4勝したのが効きました。近江の令和12勝は大阪桐蔭などと並んで全国最多。

3位は13勝6敗で宮城、昨夏優勝の仙台育英が大阪桐蔭、近江と並んで令和合計12勝しています。東北学院も初戦を突破しましたが、2回戦を辞退したのは残念でした。

帰れま10をやったら最後まで開けられそうにないのが6勝3敗で4位に入った山形。夏は初戦敗退がなく、交流戦でも勝利。また選抜に1度も出場していないのがかえって勝率低下を防いだと思われます。

5位に今春山梨学院が6勝を積み上げた山梨。一気に順位を上げています。日本航空も2021年に2勝しています。愛知も同率・同勝利数で5位。2019年春の東邦優勝は平成31年のため除外してもこの順位。中京大中京、愛工大名電、東邦の3校が複数勝利をあげています。

7位に兵庫。明石商、神戸国際大付、報徳学園がそれぞれ複数勝利。社も1勝しています。8位の神奈川は2021年春の東海大相模の優勝、9位の和歌山は2021年夏の智弁和歌山の優勝がありました。そして、春1校夏2校固定と出場数が多い東京が14勝10敗で10位に入りました。東京は関東一、国士館(交流試合)、東海大菅生、二松学舎大付、國學院久我山と5校が勝利しており、これは全国最多校数です。ちなみに東京の10敗のうち5敗は大阪勢が相手です。11位は山口で、ここも4校(宇部鴻城、高川学園、下関国際、光)が勝利しています。

交流試合を抜きにしたら、奈良石川が10位以内に入ってきますが2県とも交流試合に出場した2校がともに敗れたため、勝率を引き下げてしまいました。

令和・甲子園勝率 上位10都府県

1位 大阪 .786 22勝6敗
2位 滋賀 .706 12勝5敗
3位 宮城 .684 13勝6敗
4位 山形 .667 6勝3敗
5位 山梨 .643 9勝5敗
5位 愛知 .643 9勝5敗
7位 兵庫 .619 13勝8敗
8位 神奈川 .615 8勝5敗
9位 和歌山 .611 11勝7敗
10位 東京 .583 14勝10敗

令和・甲子園勝率 下位

これはもう、令和という切り取り方が悪くてここに入ってしまった県もあるかと思います。
38位の愛媛は1勝4敗。済美が2018年(平成30年)に4強入りしていますので、10年単位等で見ると中位に上がっていくと思われます。愛媛はこのところ、松山聖陵、聖カタリナ、帝京五と甲子園初出場が続々と出ており、まだ甲子園慣れしていないという事もあるでしょう。令和勝率もすぐ改善してくでしょう。ちなみに、愛媛より上位は2勝している県です。

39位の徳島は1勝5敗。2022年春夏連続出場した鳴門が、春は大阪桐蔭、夏は近江と対戦したのが痛かった。好投手がいたけど相手が悪かったと言えます。徳島と同率・同敗戦数39位で鹿児島。ここは意外でした。神村学園、鹿児島実、樟南、鹿屋中央と平成後期までかなりの確率で初戦は突破しているのですが、令和に限ると勝利は2019年の神村学園だけ。それも相手は令和0勝の佐賀・佐賀北でした。得点が取れていない試合が多く、このところ低迷期に入っていると言えるかもしれません。

41位が1勝6敗で鳥取と静岡。鳥取の1勝は2021年春の鳥取城北で相手は同率41位の静岡の21世紀枠・三島南でした。鳥取はここ30年くらい勝率が上がっていません。1大会2勝が1988年春までさかのぼってしまいます。ただ、鳥取城北は選抜も含めて出場頻度が上がってきており、惜しい試合も多いので鳥取城北がこのまま出続ければいずれ勝率も上昇していくのではと思われます。
静岡が41位は意外でした。交流試合で加藤学園が鹿児島城西に勝利したのみ。下位の県は下位の県同士でしか勝っていない状況で、鹿児島同様にここも低迷期と言えそう。静岡に場合は、県土が東西に広く都市も連なっているため、選手が特定の学校に集中せずに分散するのが一因にあると思われます。静岡市、菊川市、三島市、沼津市、藤枝市・・・と各地に甲子園を狙える学校があります。ただ平成までは静岡高校や常葉菊川の実績があるようにたまたまここ数年上手くいっていないだけかも知れません。

43位が1勝7敗で群馬。これも意外でした。健大高崎の1勝のみ。全国制覇経験のある前橋育英もいてそこそこ強い印象でしたが、令和に限ってはこの勝率。ただ、選抜に2校、交流試合にも2校出ているように、甲子園では負けていても秋の関東大会ではしっかり勝ち上がっている訳なので、特にこのところ常連となっている2校が出続ければそのうち勝率は上がっていくでしょう。

44位が北海道で1勝10敗。厳しい状況です。駒大苫小牧の大躍進から10年以上が経ち、2015年春の東海大四、2016年夏の北海と二年連続で決勝進出しましたが、2017年以降では2勝18敗。札幌大谷が米子東に、帯広農が健大高崎に、つまりどちらも低迷県に勝利したのみです。春1校夏2校の出場が確定しているため、出場回数が多いのですが、低迷しているため1つ勝ってもなかなか勝率が上がりません。ただ、1点差負けが多く、失点も少ない試合がほとんどなので、勝負強さや勝ち切る強さが相対的に弱いのかなと感じられます。

45位からがまだ令和になって勝利がない3県。
45位は0勝3敗の新潟。2000年以前に選抜に出たのが5度のみで、選抜初勝利も2006年と最も遅かった。選抜通算でもまだ3勝で、出場自体が2014年を最後に遠ざかり、北信越でも苦戦を強いられていると言えます。もともと甲子園勝率ランキングで下位に低迷していた新潟ですが、2009年夏の準優勝があるように、日本文理の台頭は期待を抱かせるものでありました。ただ、その日本文理もこのところ3大会連続初戦敗退。日本文理でも甲子園では勝てないと思われると選手が集まらず分散してしまい、混戦模様となっていくと結果的に勝率を上げるのは難しくなります。

46位が宮崎。0勝4敗。うち2021年夏の宮崎商は不戦敗なので実質0勝3敗として46位にしています。宮崎も静岡同様に分散傾向が低迷の一因にありそうです。ただ10年前には延岡学園の夏準優勝があり、その後も日南学園や聖心ウルスラが勝利しています。また、春は頻繁に出てきており、九州大会では十分に通用しています。ここ数年は甲子園では得点力不足で苦戦していますが、新潟や北海道よりはトンネルは長くないように思われます。令和になって甲子園未出場の日南学園が出てくると、変わるのではという予感があります。

そして47位が佐賀。令和になって0勝4敗ですが、甲子園勝利は2013年夏の有田工までさかのぼります。甲子園の勝利から10年遠ざかろうとしています。今の中学生は、佐賀県勢が甲子園で勝った姿を知らない子ばかりになってきています。
近年の甲子園出場校を見ると分かる通り、県西部の有田工、伊万里、県東部の東明館、県都の佐賀北、佐賀商に、第二の都市唐津からは唐津商、早稲田佐賀と分散が極まっています。
従ってここに通えば甲子園に行けそうという学校がありません。なので、有力選手は県外に進学しがちになります。どれだけ低迷していても夏は1校が甲子園に出ます。すると混戦の中からそこそこの学校が甲子園に出場してしまい、敗退。佐賀の学校では勝てないとなり、ますます有力選手の県外流出傾向が強まる悪循環にはまります。当然なかなか九州大会を勝ち抜けないので春はめったに出場できません。
また、意外かも知れませんが、決して野球熱が低いわけではありません。私の主観ですが、指導者である監督は熱心な方が多いと感じます。その熱心な監督が少ない戦力でなんとかしようとそこそこのチームを作り、それが甲子園に届いて、しかしやはり実力では全国で勝てない、そういう状況が今の佐賀であり、佐賀の苦しい状況ではないかと見ています。

もともと佐賀藩の時代から質素倹約の気質があった佐賀県の県民性。野球でもたまに派手な事もありはするものの基本的には堅守で犠打を多用するチームが多いです。
調べてはいませんが、甲子園のホームランを最後に打ったランキングがあれば佐賀は最も古いかも知れませんし、二桁得点した試合も最少クラスと思われます。

昨年の有田工は久々の選抜一般枠での出場で、しかも春夏連続で甲子園に出場しました。春を経験してからの夏は多少期待をしたのですが、力を発揮させてもらえなかったように見えました。

まだもう少し時間はかかりそう。だけどほんの少しの差のような気もする。
新設校の早稲田佐賀や、強化を始めた東明館が甲子園の土を踏み、佐賀商や佐賀北も県内では私立に負けないようにチーム作りをしている。最近では全国制覇を経験した佐賀北の卒業生が続々と県内の各校で指導をしている。そういうアツい指導者の気持ちはもちろん、私のような佐賀の高校野球ファンの期待に、久々の甲子園勝利で応えてくれる学校が、今年こそは出てきてくれないかなと思うのでした。

令和・甲子園勝率 下位10道県

38位 愛媛 .200 1勝4敗
39位 徳島 .167 1勝5敗
39位 鹿児島 .167 1勝5敗
41位 鳥取 .143 1勝6敗
41位 静岡 .143 1勝6敗
43位 群馬 .125 1勝7敗
44位 北海道 .091 1勝10敗
45位 新潟 .000 0勝3敗
46位 宮崎 .000 0勝4敗
47位 佐賀 .000 0勝4敗