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【地理学専攻の読書記録】いやよいやよも旅のうち

「旅なんかしてどうするんですか」
私の返事がいきなり喧嘩腰なのは、旅が嫌いだからである。あれはエネルギーの余っている人が行うものであって、私のようにじっとしているだけで精一杯という人間にはすべてが過酷なのだ。

本書 北海道編 より

『いやよいやよも旅のうち』の概要

2020年4月に集英社文庫より出版された、北大路公子さんの旅行エッセイです。
冒頭の引用の通りに旅嫌いの北大路さんを担当編集者・元祖K嬢が旅に連れ出し嫌な事や面倒なことを頑張ってみる、という内容です。
旅行が好きな人にとっては、そんなに嫌がらなくてもいいのにと感じますが、旅行が嫌いな人にとっては別の感じ方があるのでしょう。とても面白く読めるエッセイです。

旅行は山梨編、沖縄編など全部で6編です

『いやよいやよも旅のうち』の著者 北大路公子さん

北海道出身のエッセイストです。
20代の時に、学研の女流文学新人賞・フェミナ賞を受賞されていますが、この時の作品は出版されなかったようです。その後、2001年開始のウェブ日記が評判となり、2005年に『枕もとに靴 ああ無情の泥酔日記』で作家デビュー。日記から出発されているように、日記調のエッセイを多く出版されていて、ユーモラスな筆致が特徴です。

『いやよいやよも旅のうち』のおすすめポイント

きちんと旅日記の形式になっていて、その筆致がたいへんユーモラスで面白いです。嫌がり方が半端なくて、あれも嫌だ、これも嫌だ、死んでしまう、と言ううちに過剰な妄想は意味不明なレベルに話を逸らしていきます。

また担当編集者・元祖K嬢など同行者との掛け合いも楽しく読ませてくれます。

怖くない怖くないと自分に言い聞かせても、非常に怖い。ちょっとでも動くとバランスが崩れて観覧車ごと倒れてしまう可能性があるので、微動だにせず中空を凝視していると、元祖K嬢が外を指さしながら話しかけてきた。
「あの絶叫マシン乗りますか?」
「いやだよ」

本書 山梨編 より

山梨で青木ヶ原樹海の洞窟探検、岩手でレンタルサイクルで遠野の街巡り、沖縄の慶良間でシュノーケリングなど体験系のイベントが多く、その多くを乗り気でないまま体験されていく中でも、朝からビールを飲み、温泉に入るなど北大路さんらしい旅行の楽しみ方をされている様子も垣間見られます。