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【地理学専攻の読書記録】エベレストの空

『エベレストの空』の概要

『エベレストの空』は2022年7月に光文社から発売されたオールカラーの新書版エベレスト紀行です。2021年に著者自身が登頂を果たした経験を豊富なカラー写真とともに詳細に描いてあります。また、エベレスト登頂の写真集は別途出版されています。

『エベレストの空』の著者 上田優紀さん

世界中の極地や僻地を旅しながら撮影する写真家、大自然や生物の営みを撮影する「ネイチャーフォトグラファー」です。アマダブラムやマナスルなど、ヒマラヤをテーマとした写真展を開催されています。

『エベレストの空』はこんな人におすすめ

紀行のジャンルの中でも特殊な部類に入ると思いますが、紀行文学が好き、海外旅行が好き、エベレストに興味がある、エベレスト登頂・登山に興味がある、という方におすすめです。また、地理学を専攻する学生は、自然科学的教養として8000m峰の世界がどのようなものかを知っておくのは良い事だと思われます。

『エベレストの空』のおすすめポイント

エベレストは誰もが良く知っている世界一高い山ですが、標高8000mを越える世界がどのようなものなのか、どうやって登頂するのかまでは、あまり知られていないかと思われます。本書は、エベレスト登頂の写真だけでなく登頂の経過を詳細にレポートされている点に大きな価値があると感じます。
章立ても、
第一章 準備
第二章 街道
第三章 順応
第四章 停滞
第五章 頂上
と、登頂までの過程の部分に多くページを割いてあります。

『エベレストの空』の印象的な表現

終盤の標高の高いエリアに入っていくと、その場に居たものにしか分からない独特の表現が多く出てきます。

 それでもお湯だけはしっかりと飲み続けた。一日四リットル。(中略)睡眠も食べることも、飲み物を飲むことさえ困難なのがこの標高なのだ。

第三章 順応より

極度の乾燥に喉がやられ、咳も止まらない。くたびに体力は消耗していく。もう酸素の味さえも忘れてしまった。

第五章 頂上より